知るともっと着物選びが楽しくなる!着物の柄について その4

お公家さんから広まった「有職文様」

平安時代、宮中の公家の官職や儀式を指して「有職」(ゆうそく)といいました。

なので彼らが着ていた装束や使われていた調度品に用いられた文様を「有職文様」(ゆうそくもんよう)と呼ぶようになったのです。

もともとは中国から伝わった文様で、宮中での文化に合うように日本風にアレンジされ、当時はお公家さんのみが使うことを許された高貴な文様でした。

時代が下るにつれて武士が家紋や衣装に使うようになり、しだいに一般にも広がっていきました。

時代の主役が公家から武士、そして町人へと変わっていく中で、特権階級にしか使うことが許されていなかった「有職文様」が広まっていったのは興味深いことです。

町人の中ではじめてこの文様を使い出した人の周りは、さぞかしざわついたんだろうなと想像してしまいます。

一般市民からすれば憧れの対象だった「有職文様」が、広く使われだして一般的になっても、その高貴で気品ある印象がそのままだったのは、洗練された格調高いデザインと、模様に込められた意味によるものです。

「有職文様」のほとんどが「高貴」や「気品」といった意味を備えているのです。

名前は知らなくても、あ、この模様見たことがある、というものがひとつふたつはあるのではないでしょうか。

着物では柄というよりも模様のように使われている「有職文様」。

格式高い織りの帯に使われることが多いですね。

そんな「有職文様」にはどんなものがあって、いったいどんな意味がこめられているのでしょう。

これを知ることで平安貴族のみなさんの美意識に少し触れてみるのも面白いと思います。

立涌文(たちわく・たてわく・たちわき)

お能の装束にも使われるこちらの文様は、水や雲などが水蒸気となってが立ち涌く様を図案化されたもので、名前の由来にもなっています。

昔から蒸気が立ち上る様子は良いしるしとされていることから、立涌文も吉祥文様のひとつでもあります。

菊や雲など、ほかのモチーフとからめてデザインされることも多くあります。

花菱文(はなびしもん)

有職文様として、限られた人しか使うことができなかったことから、今では「高貴」という意味をこめて着物にデザインされている文様です。

家紋にもよく使われていて、昔の武士から現代では9代目松本幸四郎さんや北島三郎さんなどの家紋にみられます。

亀甲文と組み合わせた「亀甲花菱」も帯などに多く用いられています。

亀甲文(きっこうもん)

見ての通り、カタチが亀の甲羅を模したようなものであることからその名前がつきました。

「亀は万年」の言葉通り長寿を祈願する吉祥文様として古くから用いられてきました。

こちらも他のモチーフと組み合わせてデザインされることの多い文様です。

七宝文(しっぽうもん)

有職文様」より

おそらく有職文様として一番ポピュラーなのがこの「七宝文」(しっぽうもん)なのではないでしょうか。

円の四方が重なって連続していく幾何学模様です。

もとは「十方」(じっぽう)や「四方襷」(しほうだすき)と呼ばれていましたが、その音が仏教で貴重とされる七つの宝である七宝(しっぽう)に似ていることから、転じて柄の名称として定着しました。

名前のもつおめでたい感じが喜ばれ、広まっていったようです。

唐草文(からくさもん)

唐草模様として「泥棒のふろしき」なんかで私たちには馴染みのある柄ですね。

こちらは古代ギリシャにあるものが原型といわれていて、日本には奈良時代にシルクロードを通って中国からもたらされたとされています。

蔦が絡み合う様子が描かれたこちらの文様は、鳥や果物など、他のモチーフと一緒に描かれることも多いです。